ブロガーの菅原美和子です。
2020年夏、私とパートナーはアイルランドから彼の故郷オランダへと、数々の困難を乗り越えて移住を果たしました。
本シリーズ「オランダ移住劇2020」では、その一部始終をえがいていきます。
空の「改札」を出ると、
いつもなら、荷物検査の前には長蛇の列が出来ていて
「まだかなぁ」と、ちょっぴりソワソワしつつ、ディズニーのアトラクションで
首を長~くしながら順番が来るのを待つ、みたいなあの高揚感に心が躍ってくるところ。
のはずだったのが、
あっけなく、たったの5分で通過できてしまった。
淡々と、朗らかにいこう
「あれ、もう終わり?」
あまりにもあっさりとしていて、荷物検査を一瞬で終えられたのは良かったものの、なんだか物足りなさが残る。
待っているうちに、わくわくと旅の気分が高まってくるものなのに。
気分がイマイチ盛り上がりきらないうちに、機械から出てきた荷物を再び背負って、前へと歩き出す。
来た道がすこし恋しい気持ちになって、
ふと振り向くと
閑散としている荷物検査の脇に立って、なんと空港の職員さんの半分くらいがノーマスクで(!)、それも数人は肩と肩が触れ合う距離で、コーヒー片手に談笑しているではないか。
軽やかに笑うその姿からは、びっくりするほど緊張感が感じられない。
「公共の場に立つ職員さんくらい、模範として振る舞うべきでは」
そんな考えが頭をかすめた。
これは、「日本人的な思考」なのだろうか。
数年暮らしただけの(しかも今から国を出ようとしている)外国人の私があえて、お説教をしようなどとはしないし、
そもそも彼らには彼らのやり方がある。
たしかに人の行き交う空港のような場所で、毎秒毎分のように精神を張り詰めて過ごしていたら、コロナ以前に心が崩壊してしまうだろう。
ところで、アイルランド人の日常に織り込まれている、あの朗らかな笑い。
実は理由があるのでは、と考えている。
約800年もの長きにわたり、お隣の大国の属国状態であったアイルランド。
エメラルド色のこの美しき島の住人たちは、手に負えないほど強大な力と接したときに、心の奥底では抵抗しつつも、
上手に受け流す術を身に付けているように思えてならない。
その術が脈々と時空を超えて、彼らのスピリットに受け継がれているのかな。
ヨーロッパは広い。
照りつける太陽のような、一般的なイメージのイタリア人やスペイン人のパッショネートな陽気さとは異なり、
アイルランド人のそれは軽やかでサラッとしている(という気がする)。
あくまで淡々と、しかし愛嬌のある笑みを浮かべ日々を過ごす生き様は潔く、どこか洗練された印象さえ感じさせるのだ。
それが行き過ぎて、大事なことまで「どこ吹く風」とサラッと聞き流してしまうところがたまにキズだけれども…。
振る舞いという名の装いとケルトの誇り
思うにアイルランド人の軽妙な人懐っこさは、あくまで表向きに見せる「装い」であって、
本当の姿はレースのカーテンのように包まれて、秘められている。
ケルトの誇りを全面に出すのはちょっぴり照れくさいのだろう。
よそ行きの衣装に覆われて普段は見えないけれど、「民族の誇り」に裏打ちされた心の芯が真っ直ぐ通っている。
ベールの奥に息づく真面目で、誠実な素のままの魂。
ときおりうっかり、その美しさがふと隙間から零れて、眩(まばゆ)いほどに光り輝くときがある。
とても尊く、愛おしい瞬間である。
続く。
シリーズ「オランダ移住劇 2020」次回の第9話は、こちらからどうぞ:
Ep. 9 オランダ移住当日。アイルランド生活最後の日 その9
シリーズ「オランダ移住劇 2020」初回と前回の第7話は、こちら:
Ep. 1 オランダ移住当日。アイルランド生活最後の日 その1
Ep. 7 オランダ移住当日。アイルランド生活最後の日 その7
私がアイルランドに渡航した経緯についてはこちらをご覧ください:
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