ライアンエアーのTerminal 1に着いた。
4年の月日を経て、ダブリン空港は心弾む、愛おしい場所へと自分の中で変化していた。
もう、一人ぽつんと歩く場所ではないし、陸のヨーロッパにいる友達に会いに、
一人で意気揚々と出掛けたりしていくうちに、愛着が芽生えていった。
車を出る前に一瞬、時の流れに想いを馳せる。
アイルランドと世界をつなぐ、玄関口。
単身、奮闘していたあの頃の自分。
少しずつ、自信を付け始めた自分。
常に私はちょっとずつ変化していて、
ここのドアをくぐる度に、私は違う自分だった。
身なりも、表情も、心持ちも。
あの頃の苦しさや、喜び…私は忘れない。
私は変わらぬ空港の姿を見つめながら、これまでの自分を労った。
アイルランドの「心づけ」文化
タクシーを降りるときに、「心づけ」をしようと、彼と目配せをした。
アメリカやイギリスなど、チップが「常識」とされているような国ほどは求められないが、アイルランドでは文字通り「心づけ」として、気持ちを伝えるためのチップは根付いている。
カフェやカジュアルなレストランで、おつりの1、2ユーロほどを「大丈夫です」とニッコリ、微笑みながらサッとその場を発つと、
たいへん喜ばれるのだ。
ちょっとお値段の張る場所は別ではあるが。
タクシーは?というと、「あるといいけど、なくても差し支えはない」といった印象である。
そもそもダブリンではFREE NOW(旧:mytaxi)の配車アプリで車を呼ぶことが大半で、お支払いもアプリに紐づけられているカードで大抵の場合は済ませてしまうため、現金のやり取りがない。
つまり、おつりが発生しないのだ。
アプリ上でチップ率を10%などと設定できるようになってはいるが、普段は設定しないことの方が多かったように思う。
そのまま「お支払いはアプリでお願いします」
「オッケー!Have a nice day」
「Thanks! And ユートゥー、バーイ♬(ノ゜∇゜)ノ♩」
で済んでしまうこともあれば、
運転手さんと会話が弾んだり、気さくな方だったりした場合、
あえてアプリ上ではなく、手で直接チップをお渡ししていた。
「特別感」の演出である。
余談だが、Deliverooなどのお食事のデリバリーサービスも同様に、手渡しにこだわっていた。
この方が、心が通う瞬間を味わえるのだ。
運転手さんや宅配員さんは
「あるといいな」くらいの具合で、デフォルトでは、チップをあまり期待していないようにみえる。
(いや、正確に言えば、期待はちょっぴりしているけれども、そういった素振りは見せない)
心づけを渡すと、「嬉しいサプライズ」としてとても喜んでもらえるので、こちらも本当に嬉しくなる。
おつりを切らしていて、50セントとか、20セントとかになってしまうときもあるが、
あくまで「ありがとう」という気持ちを伝える手段として、現地では定着しているように思う。
…と、前置きがだいぶ長くなった。
私たちは玄関先で少々お待たせしてしまったので、彼と私で各々5ユーロずつほど出し合ってお渡ししたところ、運転手さんはニッコリと微笑んだ。
「どうぞお気を付けて」
「良い一日を!」
最後はあっさりとしたやり取りであったが、心は軽やかで
アイルランド滞在最後のミニ・ロードトリップの後味は、爽快であった。
続く。
【関連エピソード】
運転手さんをお待たせしてしまった…
Ep. 3 オランダ移住当日。アイルランド生活最後の日 その3
シリーズ「オランダ移住劇 2020」次回の第6話は、こちらからどうぞ:
Ep. 6 オランダ移住当日。アイルランド生活最後の日 その6
シリーズ「オランダ移住劇 2020」初回から第4話までは、こちら:
Ep. 1 オランダ移住当日。アイルランド生活最後の日 その1
Ep. 2 オランダ移住当日。アイルランド生活最後の日 その2
Ep. 3 オランダ移住当日。アイルランド生活最後の日 その3
Ep. 4 オランダ移住当日。アイルランド生活最後の日 その4
私がアイルランドに渡航した経緯についてはこちらをご覧ください:
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