Ep. 1 オランダ移住当日。アイルランド生活最後の日 その1

ブロガーの菅原美和子です。
2020年夏、私とパートナーはアイルランドから彼の故郷オランダへと、数々の困難を乗り越えて移住を果たしました。
本シリーズ「オランダ移住劇2020」では、その一部始終をえがいていきます。

Lucan, Dublin in the morning
ダブリン郊外のルーカン

「メイクOK、パジャマもスーツケースに入れた」
「えと、あとやることは… バスルームにある歯ブラシセットを回収して、ここと寝室の床を仕上げに掃除機掛けてと」

4年間を過ごしたアイルランド生活最後の日。
渡航当時、新卒ホヤホヤの22歳は社会の荒波に揉まれ、何人もの大家さんにいじめられ、
月日を経ていつの間にか、傷だらけの女戦士となっていた。

でも、そんな中で人の痛みが苦しいくらい分かるようにもなった。
と同時に、身に沁みるような人の優しさや有難みを、心の底から嚙みしめる喜びも知った。

不器用ながらも、なんとか走り抜けてきた
忘れがたき日々。

ダブリンのローズマリー
道路脇の花壇に咲く、ローズマリーの花


朝が来た。

私は前の晩に用意しておいた「やることリスト」を片手に、部屋を出る前の最後の2時間、いつもの10倍速位で動いている。

ハーブティーでも飲みながら、最後の日の朝くらいはその感慨に浸っていたかったものだが、
その余裕なんて、1ミリもない。

ギリギリにならないと、スイッチが入らないタチなのだ。

ああ。

おまけに彼も同じ「タチ」で、二人とも引っ越しの準備を先延ばしにしていたツケが、今来ている。
引っ越し、もっと言えば、国を跨いだ移住当日の朝に。

「部屋」を出ると書いたのは、私たちは間借りしていたからだ。
彼の親友であるハウスメイト達は、今は家を空けていて「大陸」にいるが。
とにかく今は、自分達でなんとかするしかないのだ。

トイレの横(シャワーと一緒に備え付けられている)には窓があって、脇スプレーやら何やら色々揃って並べられている。
なぜか一緒に、蚊よけの「サラテクト」まで置いてある。
なぜ!!!!

いや、前回窓辺を掃除したときに、雑巾でホコリを一掃したのは良いが、スプレー類は元の状態に戻しておいたんだった。
あのときに、すでに段ボール箱にしまっておけば良かった!

「サラテクト」については、空っぽだが捨てられない。
彼が私に出会う数年前、日本に旅行に行ったときに買って使った立派な「お土産」なのだ。

それから、ここには日焼け止めクリームも…。
8月下旬。アイルランドにおいてはもうこの時期、なくてもやっていける。
なぜなら、長袖だから。
現地の方々以外はね。

2018年11月ダブリンの夜景
ダブリンを南北に分かつ、リフィー川の夕暮れ

アイルランドの人たち優しかったなぁ。

思い出に浸っていたいが、時間は刻々と迫る。

しょうがない、こういう日焼け止めクリームとかスプレーの類は、適当に袋に入れて、次は次!?

よし、床掃除に取り掛かろう。
ああ、ほんとに時間がない。あと… 15分!

スーツケースはもう全部まとめてあるし、あとは綺麗ピカピカにして部屋を出よう。
バスルームの床をこする。
無心で、こする。
忙しいなか、なんだか瞑想みたいだ。

クリーニング・メディテーションとでも呼ぼうか。
るんるん♪

♪♪♪ … 着信音。

彼の携帯だ。

廊下で何やらバサバサとやっていた手を止めて、何か話している。

親友(男)が連絡してきたみたい。
ん?え?女の人の声が聞こえるぞ。

どうした、何があった?!





続く。

 

シリーズ「オランダ移住劇 2020」次回の第2話は、こちらからどうぞ:
Ep. 2 オランダ移住当日。アイルランド生活最後の日 その2



私がアイルランドに渡航した経緯についてはこちらをご覧ください:
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