海外在住者の哀しみ。郷愁の念とコロナ時代

飛行機から眺める日本の夜景

ああ、日本にいる家族が恋しい。
日本の四季が恋しい。
温泉に浸かりたい。
油ギトギトのラーメンが食べたい。

故郷を離れて自ら海外に来ておいて、

「何を好き勝手言っているんだ」なんて思われてしまいそうだが。


なぜ、海を越えた「壮大な家出」をしたのかと言えば…

家族は大好きだし、今も昔も安全基地であることに変わりはない。

しかし、小中高大、と大きくなるにつれて、
ますます、周りの価値観とイマイチ繋がりきれなくなってしまった感じがして、
私は大学卒業と同時に、海外へ飛び出したのだ。

航路は大きく西に逸れて(?)アイルランドでまず4年間過ごし、
現在はオランダで暮らしている。
 

海外から2年半、一度も帰国していない

青空と伝統的な風車。ライデンにて
オランダ、ライデンの風車

オランダの「サーチイヤー」ビザが、今年の10月で期限を迎えてしまうのだが、
それまでに、ビザの切り替えをしなければならない。

ここで一時帰国してしまえば、
ビザが中途半端な身分で、今度はオランダに入国出来るのかどうか。

日本に一時帰国するにしても、長期のパートナービザに切り替えてからでないと、あまりにもリスクが高い。
うっかり、彼と超遠距離になってしまっては悲しい。

そもそも、移動によるコロナのリスクはあるが、
今は水際対策がしっかりしているし、日本に入国してからの
数日間の「軟禁」だって、もはや私は厭わない。


なにせ、日本には2018年の10月以降、一度も帰国していないのだ。
つまり、最後に一時帰国してからすでに2年半以上、経過してしまったことを意味する。

その間、家族には会った。
アイルランドに遊びに来てくれたのが、2019年のクリスマス。
ただ、そのときから数えても、1年半が経ってしまいそうだ。

2018年の秋、成田空港を発つときに、
不覚にも涙を流してしまった。

いよいよ離陸、成田空港ターミナル2
機内から撮った成田空港

雨に濡れた飛行機の窓。成田空港にて
あの日の夜は、雨が降っていた。

飛行機から眺める日本の夜景
でも、夜景は綺麗だった。

当分、日本に戻ってこれないことを、心のどこかで予知していたのかもしれない。

ただ、日本を離れてしばらく経ったいま、
今、日本に一時帰国したところで、
あちこち足を伸ばしたり、旅したりできるわけでもないだろうし、
結局は根無し草のように、ふわふわと宙を漂うだけかもしれない。

でも

極端な言い方だけど、
コロナ禍でどこか、親と生き別れたみたいになっていて。

家族と会って、ともに時を過ごす。
そんな当たり前のようなことが、出来ない。

父母が元気だからこそ、存分に親孝行していないということが
余計に胸を引き裂くような痛みとなって、私を苦しめる。
 

私は今、パートナーの実家に住まわせてもらっている。
不安定な世の中にあって、家に住むことが出来る。それだけで感謝しなければならないはずなのに。
美味しいごはんを毎日食べることが出来て、温かいシャワーを浴びれて
何不自由なく暮らせるように、彼の両親が生活環境を整えてくださった。

ここにいる間に、少しでも将来のために貯金できるようにと…。

どれだけ感謝しても、しきれない。
 

それなのに、コロナ禍の今
どうして、自分自身の両親と一緒にいてあげられない?

幸い、両親ともに元気に過ごしているが、
気になってしまって、夜なかなか寝付けない日の方が多いくらいだ。


あと3ヶ月もすれば、彼の実家に住まわせてもらって1年になる。

これ以上、面倒を掛けてしまうのはアレだし、
彼の両親も、そろそろ私たちだけで生活してほしいと思ってきている。
日本人お得意の「空気読みの術」で、ひしひしと感じる。

たっぷりご迷惑をおかけしているのに
「心配いらないよ」と言ってくださるのが、ほんと泣ける。

ああ、どうしよう。

 

家を買えばいいさ

サーモンピンク屋根の可愛いオランダ式の家
長閑な牧草地に建つ、可愛いオランダ式の家

彼自身も、周りのオランダ人の方々も皆そろって
「家を買って住宅ローンを組んだ方が得だ」という。

「住宅ローン?!」
背中に羽根のついた、自由人の私が…?!

ネパール・カトマンズの世界遺産、ボダナート にて
カトマンズの世界遺産「ボダナート」(Bouddha Stupa) にて。
ネパール国内では、チベット仏教最大の仏塔。

香港の高層ビルをバックに、海風を楽しむ
香港の高層ビルをバックに。
マレーシア、マラッカで見つけた小さなオランダ式風車
マレーシア、マラッカにて。2013年12月撮影。
あのときは何気なく撮ったミニ風車だけど、のちにオランダと私の人生が繋がった。縁を感じる一枚。

私と南仏、バレンソルのラベンダー畑
南仏、バレンソル。ラベンダーの甘く、ふくよかな香りに包まれて。

私と南仏、ニースのコバルトブルーの海とオレンジ色の屋根をバックに。
こちらは南仏のニース。コバルトブルーの海とオレンジ色の屋根のコントラストが眩しかった!

…と、あちこち歩き回っていた!
根っからの自由人の私にも、ついにこのときが来た?!


外国人の私が、彼のオランダ側の家族にウェルカムしてもらっていることも
ひしひしと感じるし、たいへん有難い。

ただ、若干なりとも
「ここに根を下ろせばいいじゃないか」と
彼らは意図して言っていないにしろ、
得体の知れないプレッシャーを感じて、肩がこってしまう。
 

彼らのロジックでは、中古っぽい家を購入して、リノベしたうえで、数年したら家をまた売ってしまえばいい、
次の買い手が見つかった時点で、未払いの分は全部帰ってくるし、買ったときよりも綺麗にして売れば、差額でプラスになるらしい。

家を買ったからと言って、中古扱いになって値が落ちるとかない、みたいな前提で話をしている様子。


たしかに、ここでは新築の家はあんまり見かけないし、
セカンドハンドのお家のほとんどは連棟式。
いわゆる「長屋」スタイル(今風に言えば、テラスハウス)で、築年数もかなり経過している印象だ。
戸建てに関しては、ちょっと背伸びしないといけない雰囲気がある。

ドルドレヒト、堤防沿いの住宅地
ドルドレヒト、堤防沿いの住宅地

歴史のある地区では、日本の江戸時代とかから(!)存在している建物まである。

ドルドレヒト旧市街地、運河沿いの家
ドルドレヒト旧市街地、運河沿いの家

「簡単なことだよ」と皆さんおっしゃるけど…。


「家やアパートを借りて、家賃を払い続けるだなんて、
そのお金は誰かさんのポケットに入っていくのみで、キミたちの利益にはならないよ」と、親切にも
彼の家族は声をかけてくださる。

「それに、購入するのはあくまで『スターターハウス』であって、そこにずーっと住まなければいけない理由なんてないよ」とも。

非常に合理的で、筋が通っている。
ただ、状況が状況だし、割り切れない感情が絡む以上、
「いや、簡単に売れると言ったって…」
と私は思ってしまうのだが。。

私、警戒しすぎなのだろうか…?


今すぐにでも、自分たちの家をゲットすればいい話けれども…
私たちは選択肢の狭間で、揺れている。

いや、正確に言えば「私たち」ではなく、
揺れているのは「私だけ」なのだけど。


上のロジックは、分からなくもないけど
ちょっとばかし、急ではないか?
ホップ、ステップ、ジャンプと段階を追わずに、
いきなり、よちよち歩きから大ジャンプするかのよう。。

 

オランダでフリーランスだと、最初の2年間はローンが組めない

これはオランダでフリーランスをする落とし穴でもあると思うのだが、
「2年間」安定した収入を証明して初めて、家を購入するためのローンが組めるという。(銀行員さんに確認済み)

住宅ローンを組むとなると、フルタイムでもパートタイムでも、
「雇われの身」であれば速攻、その許可を得られるらしい。
世間的にも「安定」が手に入る。

彼の家族はみな、私がフルタイムかパートタイムの仕事を得ることを期待している。フリーランスを続けることに関しては、首をかしげている。

プレッシャー… (-_-;)


ただ、いくら休暇の充実したオランダとはいえ、入ったばかりの新入社員がいつ・どれくらい休みが取れるのかはちょっと、分からない。
今は、リモートで色々と仕事が出来る世の中になりつつあるが、だからといってユーラシア大陸を横断した先の国で、ワーケーションさせてもらえるのかは、謎だ。


いまパートタイムなり、フルタイムなりを始めてしまったら、
本当に次はいつ日本に帰れるのか、全く分からない。


だからこそ、今いずれかの形態で雇われることについては
足踏み状態だ。

日本一時帰国の夢が…
どうなっちゃうんだろう。。
 

それに、
一度雇われてしまえば職は安定するにせよ、
なんだかこの世の終わりみたいな気さえしてしまう。

…いや、それはさすがに大袈裟だが、
彼の実家住み状態から、職を得た途端に異国でいきなりローンを組む?
目隠しでバンジージャンプするみたいな怖さが、ちょっとある。
 

なんか、せかされるようにして、「家」というビッグなお買い物を、混乱のさなかにするのもなぁ。


彼の親戚は、もし私たちが「借り家」に住むとなれば
「そんな無駄なことして」と、いたずらっぽく突っついてくるかもしれない。
(皆さんとても良い人たちです)

しかし

どーんと、一つの場所に居を構えて、子供を育てるとなれば話は別だが、
まだ小さな子がいない今のうちは、もうちょっと身軽でありたい気もするのだ。



果たして、このコロナ禍においてどう動くのが良いのだろう。

何を選択して、何をあえて選ばないか。


故郷を、家族をどれだけ想ったところで、人は
「想うだけ無駄だ」とか
「おとなしく、そこで待っておけ」とか
言うかもしれない。
 

私はただ
やり場のない、この苦しい胸の内を、
記録しておこうと思っただけだ。



私がアイルランドに渡航した経緯についてはこちらをご覧ください:
About – MiwaKosmic | 異文化は癒しだ
プロローグ – MiwaKosmic | 異文化は癒しだ


2020年夏、私とパートナーはアイルランドから彼の故郷オランダへと、数々の困難を乗り越えて移住を果たしました。
シリーズ「オランダ移住劇2020」では、その一部始終をえがいていきます。
Ep. 1 オランダ移住当日。アイルランド生活最後の日 その1

(*´ω`*) \ Share & Comment / (*´∇`)ノ